概要
Amazon Bedrock(AWSの生成AIモデル提供基盤)に、モデルの回答を最新のWeb情報に「グラウンディング(根拠付け)」できる新機能「Web Search(ウェブ検索)」が一般提供(GA)されました。これはBedrockに組み込まれたサーバー側のツールで、外部の検索サービスと契約・連携しなくても、モデルの回答を最新のWeb知識に結びつけられます。AWS公式ブログ(2026年8月4日付)で発表されました。
グラウンディングとは、学習データに含まれない「先週の決算」「昨日の規制変更」「今朝の天気」といった最新情報をモデルに与え、回答の精度を高めてハルシネーション(もっともらしい誤答)を減らす仕組みです。
何が発表・更新されたのか
今回発表されたのは、Amazon BedrockにおけるWeb Searchの一般提供(GA)です。公式情報によると、主な特徴は次のとおりです。
- 複数ソースによる根拠付け:Amazonが運用するWebインデックス(数十億件規模の文書を継続的に更新)と、組み込みの「ナレッジグラフ(エンティティ同士の関係を整理した知識ネットワーク)」を組み合わせます。事実確認型の質問(誰が本を書いたか、ある出来事が何年か等)では、ナレッジグラフを使って高い信頼度で回答します。
- 文脈効率の高い検索:ページ全体を渡すのではなく、質問に関係する箇所だけを抜き出す「セマンティック・スニペット抽出」を行い、モデルの文脈枠(コンテキストウィンドウ)に収まる形で返します。無駄なトークンを減らし、低遅延で応答できるとされています。
- 1パラメータで有効化:既存のOpenAI互換APIコールに、1つのパラメータを加えるだけで利用できます。ベンダー登録、APIキー、オーケストレーション層、別SDKは不要です。
- エンタープライズ向けのコンプライアンス対応:既定では「ゼロデータ流出(zero data egress)」で、データがAWS環境の外に出ない設計です。Web SearchはBedrockのインフラ内で完結します。
なお、AWS New York Summit 2026では「AgentCore上のWeb Search」のGAがすでに発表されており、今回はそれをBedrock本体へ拡張した位置づけです。
なぜ重要なのか
これまでモデルをWeb知識につなぐには、開発者が第三者の検索サービスを選定・連携・保守する必要があり、プロジェクトの遅延、データ所在(データレジデンシー)のリスク、運用負荷につながっていました。
Web SearchはこれをBedrockのネイティブ機能にすることで、外部ベンダーの導入審査やAPIの取り回しを不要にします。結果として、開発の初速が上がり、セキュリティ・コンプライアンス面の懸念も抑えやすくなる点が重要です。
誰に関係があるのか
主に次のような方に関係します。
- Amazon Bedrockでチャットボットやコーディング支援、社内向けアプリを開発している開発者・エンジニア
- 最新情報に基づく回答が求められる業務(問い合わせ対応、調査、レポート作成など)を検討する中小企業の実務担当者
- データがAWS環境外に出ないことを重視するセキュリティ・コンプライアンス担当者
なお、公式情報では、日本のリージョンでの提供状況や日本語での挙動の詳細は確認できませんでした。コード例ではリージョンとして「us-east-1」が使われています。
仕事や業務でどう使えるのか
Web Searchが有効なとき、Bedrockは検索の一連の流れをサーバー側で処理します。モデルが「最新情報が必要」と判断すると、Bedrockが検索クエリを作成し、Webインデックスとナレッジグラフから関連内容(スニペット、ソースURL、タイトル)を取得してモデルの文脈に注入。モデルはそれをもとに、出典付き(引用アノテーション付き)の回答を生成します。クライアント側でツール実行ループを組む必要はなく、1回のAPIコールで根拠付き回答が返る点が実務上のメリットです。
使い方(OpenAI Responses APIでの有効化)
公式によると、有効化は3ステップです。
- 認証・権限の設定:既存のAWS認証情報を利用します(別途APIキーは不要)。推論には
AmazonBedrockMantleInferenceAccessなどのポリシー、Web Searchには最低限bedrock-websearch:InvokeSearchが必要です。ページ全文の取得にはbedrock-websearch:InvokeFetch、ライブWeb取得にはbedrock-websearch:ExternalWebAccessを付与します。InvokeSearchが拒否されると、Web Searchは実質無効となり、モデルは学習データから回答します。 - Web Searchの有効化:リクエストに
tools=[{"type": "web_search", "external_web_access": False}]を追加するだけです。 - 出典付き回答の読み取り:レスポンスからURLとページタイトルを含む引用情報を取り出せます。
エンドポイントへのリクエストは、AWS認証情報から生成する短命のベアラートークン(最長12時間、SigV4由来)で認証します。aws-bedrock-token-generatorパッケージで発行でき、別途のキー管理は不要です。
注意点
- 提供対象:公式によると、提供開始時点でWeb Searchは、Bedrockの次世代推論エンジンで提供されるOpenAIモデル向けです。
- 取得元の切り替え:
external_web_accessパラメータは取得元(Amazonの事前インデックス/ライブWeb)を選ぶものですが、現時点ではインデックス済みWebの取得のみが提供され、ライブWeb取得は将来のアップデートで有効化予定とされています。パラメータは先行して用意されています。 - 既定値:
external_web_accessの既定はtrueで、この場合ExternalWebAccess権限が必要です。例では追加権限が不要なfalseを指定しています。 - 将来の仕様:今後の新機能では、利用者が明示的に要求した場合にのみデータを外部公開するケースがあり得るとされています。最新情報はBedrockのドキュメントで確認してください。
- 料金や日本での提供状況について、公式情報上では、日本での提供状況や対象プランの詳細は確認できませんでした。
今後
external_web_accessのパラメータが先行導入されていることから、ライブWeb取得が将来のアップデートで有効化される見込みです。コード側は変更不要で対応できるとされています。まずはインデックス済みWebでの根拠付けから試し、要件に応じて権限設計とデータ取り扱いポリシーを整えておくとよいでしょう。
公式情報
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