システム開発の現場で「CQRS」という言葉を耳にしたことはありませんか。名前だけ見ると難しそうに感じますが、考え方自体はとてもシンプルです。この記事では、CQRSがどのような設計の考え方なのか、なぜ注目されるのか、どんな場面で使われるのかを、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
CQRSとは?
CQRSとは「Command Query Responsibility Segregation」の略で、日本語では「コマンドとクエリの責務分離」と訳されます。データを書き込む処理(コマンド)と、データを読み取る処理(クエリ)を、別々の仕組みとして分けて扱う設計の考え方です。
従来の多くのシステムでは、データの読み書きを同じモデルやコードでまとめて扱うことが一般的でした。CQRSでは、この読み取りと書き込みをはっきり分けることで、それぞれに適した形で設計しやすくなると考えられています。
CQRSが重要な理由
システムが大きくなると、読み取りと書き込みでは求められる性能や処理の特徴が異なってくることがあります。読み取りは高速に大量のアクセスをさばきたい一方、書き込みは正確さや整合性が重視される場面が多いものです。
CQRSのように責務を分けておくと、読み取り専用の仕組みを軽量に最適化したり、書き込み側のルールを丁寧に組み立てたりと、目的に合わせた調整がしやすくなると言えるでしょう。結果として、複雑なシステムでも見通しよく保ちやすくなります。
CQRSが使われる場面
CQRSは、どんなシステムにも一律に使うものではなく、読み取りと書き込みの性質が大きく異なる場面で効果を発揮しやすい考え方です。具体的には、次のような状況で検討されることがあります。
- 読み取りのアクセスが非常に多く、書き込みとは別に表示を高速化したいサービス
- 業務ルールが複雑で、書き込み処理を丁寧に管理したい業務システム
- イベントソーシングなど、変更履歴を重視する設計と組み合わせたい場合
- マイクロサービスで、各サービスの役割を明確に分けたい場合
CQRSの仕組み
CQRSの基本的な流れは、操作の種類によって処理の経路を分けることにあります。おおまかには次のような手順で考えると分かりやすいでしょう。
- アプリケーションが受け取る操作を「コマンド(書き込み)」と「クエリ(読み取り)」に分類します。
- 書き込み側は、データを更新するためのモデルやルールを専用に用意します。
- 読み取り側は、画面表示などに適した形でデータを取得する専用の仕組みを用意します。
- 必要に応じて、書き込み用と読み取り用でデータの保存先や形を分けることもあります。
このように処理を二系統に分けることで、それぞれを独立して育てていけるのがCQRSの基本的な考え方です。
CQRSと似た用語との違い
よく比較されるのが、読み書きを一つのモデルでまとめて扱う一般的なCRUD型の設計です。CRUDはシンプルでわかりやすい反面、規模が大きくなると読み書きの要件の違いに対応しづらくなることがあります。
また、イベントソーシングと混同されることもありますが、これは「変更を出来事として記録する」別の考え方です。CQRSと相性は良いものの、必ずしもセットで使う必要はないと考えると分かりやすいでしょう。
CQRSを理解するメリット
読み取りと書き込みをそれぞれの目的に合わせて最適化しやすくなります。
コードの役割が明確になり、複雑なシステムでも理解や保守がしやすくなる傾向があります。また、チームで分担して開発を進めやすくなる点もメリットと言えるでしょう。
CQRSの注意点
CQRSは便利な一方で、仕組みが二系統になるぶん設計や運用が複雑になりやすい点に注意が必要です。小規模で単純なシステムにまで導入すると、かえって手間が増えてしまうこともあります。
導入する際は、本当に読み書きを分ける必要があるのかをよく検討することが大切です。すべての場面に適した万能な手法ではないという点を理解しておくとよいでしょう。
CQRSに関連する用語
- イベントソーシング:変更を出来事として記録していく設計の考え方
- CRUD:作成・読み取り・更新・削除という基本操作のまとまり
- ドメイン駆動設計:業務領域を中心にソフトウェアを設計する手法
- マイクロサービス:機能ごとに小さく分けて構築する設計スタイル
まとめ
CQRSは、データの書き込みと読み取りを別々の責務として分ける設計の考え方です。複雑で規模の大きいシステムにおいて、それぞれを最適化しやすくする利点があります。
一方で複雑さも増すため、必要性を見極めて使うことが大切です。まずは「読み書きを分ける考え方」という基本をおさえておくと、関連する設計手法の理解も深まっていくでしょう。
よくある質問
CQRSは必ずイベントソーシングと一緒に使うのですか?
いいえ、必ずしも一緒に使う必要はありません。CQRSは読み書きの責務を分ける考え方で、イベントソーシングとは相性が良いものの別の手法です。目的に応じて単独で取り入れることもできます。
小規模なアプリでもCQRSを導入したほうがよいですか?
小規模で単純なシステムでは、導入によって構成が複雑になり、かえって手間が増えることがあります。読み書きを分ける明確な理由がある場合に検討するのがよいと考えられます。
CQRSとCRUDはどう違いますか?
CRUDは読み書きを一つのモデルでまとめて扱う一般的な方式です。CQRSはその読み取りと書き込みを別々に分ける点が異なり、規模が大きく要件が複雑な場面で利点を発揮しやすくなります。

