データサイエンティストとAIの違いとは?【比較表】仕事内容・スキル・年収を徹底解説

「データサイエンティストとAI、最近よく聞くけど具体的に何が違うの?」
「キャリアチェンジを考えているけど、自分はどちらを目指すべきだろう?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか。結論から言うと、両者の最大の違いは「課題解決のアプローチ」にあります。AIエンジニアが「AIモデル(仕組み)を作ること」を主目的とするのに対し、データサイエンティストは「データを分析し、ビジネス上の意思決定を導くこと」を主目的とします。
この記事では、仕事内容から必要なスキル、年収、将来性まで、両者の違いを比較表や具体例を交えて徹底的に解説します。読み終える頃には、あなたが進むべき道が明確になっているはずです。

目次

データサイエンティストとAIの役割・仕事内容の根本的な違い

データサイエンティストとAI(ここでは主にAIエンジニアを指します)は、どちらもデータと深く関わる専門職ですが、その役割と目的には明確な違いが存在します。このセクションでは、両者の根本的な違いを明らかにします。

結論:AIは「作る」、データサイエンティストは「解いて使う」専門家

両者の違いを最も簡潔に表現するならば、AIエンジニアは「AIという高性能な道具を作る職人」であり、データサイエンティストは「データを駆使してビジネス課題を解き、意思決定を支援する戦略家」と言えます。AIエンジニアのゴールは、精度の高い予測モデルや画像認識システムといった「仕組み」を開発・実装することにあります。一方で、データサイエンティストのゴールは、分析から得られた洞察(インサイト)を基に、「売上を10%向上させる施策」のような具体的なビジネスアクションに繋げることです。扱うデータや技術に共通点は多いものの、最終的なアウトプットの焦点が大きく異なります。

【比較表】5つの軸で見るデータサイエンティストとAIエンジニアの違い

両者の違いをより明確にするため、5つの重要な軸で比較した表を作成しました。それぞれの項目を見比べることで、全体像を直感的に把握できます。

比較軸データサイエンティストAIエンジニア
主な目的データを分析し、ビジネス課題の解決や意思決定を支援するAIモデルやシステムを設計・開発・実装する
主要な対象過去から現在のデータ全般(構造化・非構造化データ)主に機械学習・ディープラーニングのための学習データ
重視されるスキルビジネス理解力、統計学、データ可視化、コミュニケーション能力プログラミング、数学、機械学習アルゴリズム、ソフトウェア開発
主なアウトプット分析レポート、ダッシュボード、事業戦略への提言、予測モデルAIモデル、API、AIを組み込んだアプリケーション、研究論文
関わるフェーズ課題設定、データ収集・分析、施策提案、効果検証要件定義、モデル設計、開発・実装、チューニング、運用

具体的な仕事内容の違いをプロジェクトの流れで理解する

例えば、「ECサイトの顧客離反を防ぐ」というプロジェクトがあったとします。この中で、両者がどのように関わるかを見ていきましょう。

データサイエンティストの主な業務

まず、データサイエンティストは「どのような顧客が離反しやすいのか?」という問いを立てます。購買履歴、サイト閲覧ログ、顧客属性などのデータを分析し、「最終購入から3ヶ月以上経過し、メール開封率が低い顧客」といった離反の予兆となるパターンを発見します。そして、その分析結果を基に「対象顧客に限定クーポンを配布する」といった具体的な施策をビジネスサイドに提言し、施策実行後の効果測定まで担当します。

AIエンジニアの主な業務

一方、AIエンジニアは、データサイエンティストが特定した離反予兆のパターンなどを活用し、「個々の顧客の離反確率をリアルタイムで予測するAIモデル」を開発します。過去の大量の顧客データから、複雑なパターンの関連性を学習する機械学習モデルを構築。開発したモデルをシステムに組み込み、安定的に稼働させるための運用・保守も行います。このモデルにより、離反の危険性が高まった顧客を自動で検知できるようになります。

求められるスキル・知識セットの比較

データサイエンティストとAIエンジニアは、キャリアを築く上で必要となるスキルセットも異なります。プログラミングのような共通基盤はありますが、専門性の方向性が違います。

データサイエンティストに不可欠な3つのコアスキル

データサイエンティストには、一般的に以下の3つの領域にまたがるスキルが求められます。

  1. ビジネス力: 業界知識やドメイン知識を基に、ビジネス上の課題を発見し、それをデータで解決可能な問いに変換する能力です。分析結果を経営層や現場担当者に分かりやすく伝え、アクションに繋げるコミュニケーション能力も含まれます。
  2. データサイエンス力: 統計学、情報科学、数学などの知識を駆使して、データを適切に処理・分析する能力です。仮説検定や機械学習の理論を理解し、目的に応じて適切な分析手法を選択する力が求められます。
  3. データエンジニアリング力: PythonやRといったプログラミング言語、SQLによるデータベース操作、データ分析基盤の知識など、データを実際に扱うための技術力です。大規模なデータを効率的に処理するスキルが重要になります。

AIエンジニアに必須の技術スタックと専門知識

AIエンジニアは、より深く、専門的なIT技術が要求される職種です。

  • プログラミングスキル: Pythonが主流ですが、C++やJavaなども用途に応じて使用します。フレームワーク(TensorFlow, PyTorchなど)の深い理解は必須です。
  • 機械学習・ディープラーニング: 画像認識、自然言語処理、強化学習といった専門分野のアルゴリズムに関する深い知識が求められます。最新の研究論文を読み、自ら実装できる能力も重要です。
  • ソフトウェア開発スキル: 開発したAIモデルをサービスとして提供するために、Web API開発、クラウド(AWS, GCP 등)の利用、Dockerなどのコンテナ技術、MLOps(機械学習モデルの運用)に関する知識が不可欠です。
  • 数学の知識: 特に、線形代数、微分積分、確率統計は、アルゴリズムを深く理解し、カスタマイズするために必要となります。

学習ロードマップの比較:未経験からの第一歩

未経験からこれらの職種を目指す場合、学習の進め方にも違いが出ます。

  • データサイエンティストを目指す場合: まずは統計学の基礎とPython(特にPandas, NumPy, Matplotlibライブラリ)の学習から始めましょう。その後、実際のデータセットを使った分析プロジェクト(Kaggleなど)に挑戦し、ビジネス課題の発見から分析、考察までの流れを体験することが効果的です。
  • AIエンジニアを目指す場合: Pythonの基礎を固めた後、機械学習の理論と主要なライブラリ(Scikit-learnなど)を学びます。次に、ディープラーニングのフレームワーク(PyTorchなど)に進み、画像認識や自然言語処理のモデル構築に挑戦します。Web開発やクラウドの基礎も並行して学ぶと、より実践的なスキルが身につきます。

年収・将来性から見るキャリアパス

キャリアを考える上で、年収や将来性は重要な判断材料です。ここでは、両者の経済的な側面とキャリアの展望を比較します。

平均年収と給与レンジの比較

年収はスキルや経験によって大きく変動しますが、一般的な傾向として、両職種ともに高い水準にあります。国内の複数の転職サービスが公表しているデータ(2024年時点)を参考にすると、データサイエンティストの平均年収は600万円〜1,000万円程度、AIエンジニアは600万円〜1,200万円程度がひとつの目安となります。特に、特定の分野で高度な専門性を持つAIエンジニアや、企業の経営課題に直結する成果を出せるデータサイエンティストは、1,500万円を超えるケースも少なくありません。未経験からのスタートではやや低い水準から始まるものの、実務経験を積むことで年収は大きく向上する可能性があります。

それぞれの代表的なキャリアパスと将来性

どちらの職種も将来性は非常に高いと言えます。DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、あらゆる業界でデータ活用の重要性が増しているためです。

  • データサイエンティストのキャリアパス:
    • 専門性を深め、リードデータサイエンティストや分析チームのマネージャーを目指す。
    • ビジネスサイドに転身し、データに基づいた事業企画やプロダクトマネージャーになる。
    • 独立してフリーのコンサルタントとして活動する。
  • AIエンジニアのキャリアパス:
    • AI研究者や特定分野(例:自然言語処理)のスペシャリストとして技術を追求する。
    • 開発チームのリーダーやテックリード、CTO(最高技術責任者)を目指す。
    • AI技術を核としたスタートアップを起業する。

【失敗回避】キャリア選択で陥りがちな罠と対策

キャリア選択で後悔しないために、よくある失敗例とその回避策を知っておきましょう。

失敗例回避策
「流行っているから」という理由だけで選んでしまう自分の興味・関心(技術そのものか、ビジネス課題解決か)と向き合い、両方の仕事内容を深く理解する。
学習範囲が広すぎて挫折してしまう最初から全てを完璧に学ぼうとせず、まずは基礎を固め、小さなプロジェクトを完成させる成功体験を積む。
理論学習ばかりで実践経験が不足するオンラインのコンペに参加したり、個人でWebアプリを開発したりして、ポートフォリオ(実績集)を作成する。
自分の市場価値を客観的に把握できていない複数の転職エージェントに登録し、自分のスキルセットでどのような求人があるか情報収集を行う。

どちらを目指すべき?適性と選び方のヒント

最後に、これまでの情報を踏まえて、あなたがどちらの道に進むべきかを判断するためのヒントを提供します。

あなたの適性はどっち?キャリア選択チェックリスト

以下の項目で、自分に当てはまるものが多いのはどちらかチェックしてみてください。これはあくまで傾向であり、最終的な判断はご自身の興味や目標と照らし合わせて行いましょう。

【A】が多ければデータサイエンティスト向きかも

  • なぜ?どうして?と物事の原因を探求するのが好きだ
  • データやグラフを見て、隠れたパターンを見つけるのが得意だ
  • 難しい内容を、専門知識がない人にも分かりやすく説明することにやりがいを感じる
  • ビジネスのニュースや企業の成功事例に興味がある
  • 調査や分析の結果を基に、次のアクションを提案するのが好きだ

【B】が多ければAIエンジニア向きかも

  • 新しい技術やツールを試してみるのが好きだ
  • ゼロから何かを組み立てたり、ものを作ったりすることに喜びを感じる
  • 複雑な数式やアルゴリズムの仕組みを理解しようとすることに抵抗がない
  • 地道なコーディングやデバッグ作業が苦にならない
  • 自分が作ったシステムが実際に動いているのを見るのが嬉しい

こんな人にはデータサイエンティストがおすすめ

「データから社会やビジネスの課題を解決したい」「分析結果を基に、人の意思決定をサポートしたい」という強い思いがある人に向いています。また、技術だけでなく、人とのコミュニケーションを通じて価値を生み出すことに喜びを感じる人にも最適な職種です。

こんな人にはAIエンジニアがおすすめ

「最先端の技術を追求したい」「自分の手で新しいサービスやシステムを生み出したい」という技術志向の強い人に向いています。論理的思考力が高く、粘り強く課題に取り組める人、そしてコンピュータの内部で何が起きているのかを深く探求したいという知的好奇心がある人におすすめです。

補足:両者の協業とスキルの重複領域

実際には、データサイエンティストとAIエンジニアの境界は曖昧な部分もあり、両方のスキルを持つ人材も増えています。プロジェクトでは、データサイエンティストがビジネス課題を定義し、AIエンジニアがその課題を解決するためのモデルを開発・実装するという形で緊密に連携します。お互いの専門性を理解し、尊重し合うことがプロジェクト成功の鍵となります。

まとめ

要点サマリー

  • 役割の違い: データサイエンティストは「データを解いてビジネス課題を解決する戦略家」、AIエンジニアは「AIという道具を作る職人」。
  • スキルの違い: データサイエンティストは「ビジネス力」、AIエンジニアは「ソフトウェア開発力」がより重視される。
  • 選択のヒント: ビジネス課題解決に興味があればデータサイエンティスト、技術の探求やものづくりに興味があればAIエンジニアが向いている傾向がある。
  • 将来性: どちらの職種も需要が高く、将来性は非常に明るいが、継続的な学習が不可欠。

読者タイプ別の次のアクション

  • 初心者の方: まずは共通の基礎となるPythonと統計学の学習から始めてみましょう。オンライン学習サイトなどを活用し、手を動かしながら学ぶのがおすすめです。
  • キャリアチェンジを検討中の方: 今回のチェックリストや仕事内容を参考に、どちらの職種が自分の価値観や興味に合うかを深く考えてみましょう。実際に両職種で働く人の話を聞いてみるのも有効です。
  • 企業の意思決定者の方: 自社の課題を解決するために必要なのは「分析による意思決定支援」なのか、「AI技術による業務自動化」なのかを明確にし、採用すべき人材の要件を定義しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 未経験からでもデータサイエンティストやAIエンジニアになれますか?

A1. はい、可能です。ただし、相応の学習時間と努力が必要です。プログラミングスクールやオンライン講座を活用し、基礎知識と実践スキルを体系的に学ぶことが近道です。ポートフォリオとなる実績を作成することも重要です。

Q2. 数学(特に統計学や線形代数)が苦手でも大丈夫ですか?

A2. 基礎的な知識は必須です。特にデータサイエンティストは統計学、AIエンジニアは線形代数や微分の理解が求められます。しかし、高校レベルの数学から復習できる教材も多いため、学習意欲があれば克服は可能です。

Q3. 文系出身でも挑戦できますか?

A3. はい、文系出身で活躍している方は多くいます。特にデータサイエンティストは、ビジネス課題を理解し、コミュニケーションを取る能力が重要になるため、文系出身者の強みが活かせる場面も少なくありません。

Q4. どちらの職種の方が求人が多いですか?

A4. 時期や業界によりますが、現在は両職種ともに求人は豊富です。AIエンジニアはIT業界、製造業での求人が多く、データサイエンティストはそれに加えて金融、マーケティング、小売など幅広い業界で需要があります。

Q5. 必要な資格はありますか?

A5. 必須の資格はありませんが、スキルを証明するために「G検定・E資格」(AI分野)や「統計検定」(データサイエンス分野)などを取得する人もいます。資格取得よりも、実務能力をアピールできるポートフォリオの方が重視される傾向にあります。

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