概要
Vercelの「AI Gateway」に、ANT Group(アント・グループ)が開発したAIモデル「Ling 3.0 Tiny」が追加されました。2026年8月13日までは無料で利用でき、それまで無料枠だった「Ling 3.0 Flash」に代わって提供されます。軽量ながらエージェント用途や会話処理を想定したモデルです。
何が発表・更新されたのか
Vercelの変更履歴(Changelog)で、「Ling 3.0 Tiny」がAI Gateway上で利用可能になったことが発表されました。AI Gatewayは、複数のAIモデルを共通のAPI(外部連携の窓口)から呼び出せるVercelのサービスです。
公式情報によると、Ling 3.0 Tinyの主なスペックは次のとおりです。
- MoEモデル:総パラメータ数7.9B(約79億)、1トークンあたりの有効パラメータは約1.3B(約13億)
- コンテキストウィンドウ:256Kトークン(一度に扱える入力量が大きい)
- 出力:最大32Kトークンまで
- 機能:ネイティブなfunction calling(関数呼び出し)、prompt caching(プロンプトのキャッシュ)に対応
MoE(Mixture of Experts)とは、モデル内の一部の「専門家」だけを使って処理する仕組みで、総パラメータが大きくても実際の計算負荷を抑えられるのが特徴です。
このモデルは、応答性の高いエージェント、指示への追従、複数ターンの会話(マルチターン対話)向けに作られている、と説明されています。
なぜ重要なのか
Ling 3.0 Tinyは、これまで無料枠を占めていた「Ling 3.0 Flash」の後継として、無料スロットに入りました。つまり、AI Gatewayを使う開発者は追加コストなしで新しいモデルを試せる状態になっています。
また、256Kトークンという大きなコンテキストウィンドウを持ちながら軽量である点は、長い会話履歴やドキュメントを扱うエージェント開発において実務的なメリットがあります。function callingやprompt cachingに対応しているため、外部ツール連携や応答の高速化を前提とした用途に向いています。
誰に関係があるのか
- Vercel AI Gatewayを使っている、または検討している開発者・エンジニア
- 軽量モデルでAIエージェントやチャットボットを構築したい中小企業の開発担当者
- 複数のAIモデルを比較して選定したい実務担当者
なお、公式情報上では、日本での提供状況や日本語対応の詳細は確認できませんでした。利用前に自社環境での検証をおすすめします。
仕事や業務でどう使えるのか
Ling 3.0 Tinyは「応答性の高いエージェント」「指示追従」「マルチターン会話」を想定して設計されています。想定される活用例としては、次のようなものが考えられます。
- スレッドの要約と返信文の下書き生成(公式のサンプルコードでも「このスレッドを要約して返信を下書きして」という例が示されています)
- 社内チャットボットや問い合わせ対応の会話処理
- 外部ツールと連携するAIエージェント(function callingを活用)
利用する場合は、AI SDK(Vercelが提供する開発キット)でモデル名を指定します。公式のサンプルコードは以下のとおりです。
import { streamText } from 'ai';
const result = streamText({
model: 'inclusionai/ling-3.0-tiny-free',
prompt: 'Summarize this thread and draft a reply.',
});
無料期間中はモデル名を inclusionai/ling-3.0-tiny-free に設定します。8月13日以降は、モデル名が inclusionai/ling-3.0-tiny に変わるとされています。コードを本番運用する際は、この名称変更に注意してください。
また、公式には「model playground」(モデルを試せる画面)でも試用できると案内されています。
注意点
- 無料期間は2026年8月13日までです。それ以降の料金体系については、公式情報上で個別の詳細は確認できませんでした。
- 8月13日以降はモデル名が変わるため、無料枠の名称(
-free付き)のまま運用を続けるとエラーの原因になる可能性があります。 - AI Gatewayは、プロバイダー(モデル提供元)の価格をそのまま反映し、推論に対する上乗せ(マークアップ)やプラットフォーム手数料は課さないと説明されています。BYOK(Bring Your Own Key/自分のAPIキーを持ち込む方式)のリクエストも同様です。ただし、Ling 3.0 Tiny自体の無料期間後の具体的な料金は本発表内では明示されていません。
- 日本での提供状況・対象プランの詳細は、公式情報上では確認できませんでした。
今後
無料枠は過去に「Ling 3.0 Flash」が占めていたことから、今後も無料スロットのモデルが入れ替わっていく可能性があります。試用目的であれば無料期間中に触れておき、本番採用を検討する場合は名称変更(8月13日)と料金体系を確認したうえで判断するのがよいでしょう。
AI Gatewayは、利用量やコストの追跡、リトライやフェイルオーバー(障害時の切り替え)の設定、カスタムレポート、Zero Data Retention(データを保持しない設定)対応、APIキーごとの予算設定、ルーティングルールなどの機能を備えています。複数モデルを一元管理したい場合の選択肢として位置づけられます。
公式情報
関連キーワード
- AI Gateway(Vercel)
- Ling 3.0 Tiny / ANT Group
- MoE(Mixture of Experts)モデル
- function calling(関数呼び出し)
- AIエージェント
- BYOK(Bring Your Own Key)





