概要
AWS Machine Learning Blogにて、請求書処理・支払い(AP: Accounts Payable)プラットフォームを提供するTradeshift社が、自社開発のBIツールから「Amazon Quick」へ移行した事例が紹介されました。エージェント型AI(自律的にタスクを実行するAI)を活用したデータ分析基盤への刷新により、クエリ応答速度の大幅な高速化やコスト削減、さらに埋め込み分析を新たな収益源に変えた取り組みが報告されています。
何が発表・更新されたのか
Tradeshiftは70カ国以上で事業を展開するAP・電子請求書コンプライアンスプラットフォームです。従来は自社開発のBIツールを使っていましたが、データ量の増加や顧客からの要望に対応しきれなくなり、Amazon Quickへ移行しました。
Amazon Quickは、業務データやアプリケーションに接続できるエージェント型AIワークスペースです。自然言語で業務データに質問できるチャット機能、コード不要で複数ステップの作業を自動化する「Flows」、複数のソースから長文の分析レポートを作成する「Research」などの機能を備えています。
Tradeshiftは2024年初頭のPoC(概念実証)から始め、2025年6月には買い手・売り手向けの本格的なレポーティング・分析アプリを提供開始。同年8月までに社内BIツールの置き換えも完了し、社内での利用率は98%に達したとされています。
なぜ重要なのか
公式ブログによると、Tradeshiftの旧BIツールは1クエリあたり最大1万行、レポートは25MBまでという制限があり、過去6カ月分のデータしか保持できませんでした。このため大規模なトレンド分析や異常検知、予測モデリングは実質的に不可能だったとしています。
Amazon Quick移行後は、100万件から1億件規模のトランザクションデータを3秒未満で処理できるようになったとされ、従来の45〜90秒から大幅に短縮されました。また、クエリ応答時間は最大30倍高速化し、総所有コスト(TCO)は40%削減されたと報告されています。単なるツール刷新にとどまらず、埋め込み分析機能自体を有料プランとして提供し、収益化につなげている点も特徴です。
誰に関係があるのか
- 自社BIツールの保守負担やスケーラビリティの限界に悩む企業のIT・データ部門担当者
- 顧客向けに分析機能やダッシュボードを提供している(あるいは検討している)SaaS事業者
- AWS環境で業務データ分析基盤の刷新を検討している中小企業の実務担当者
- カスタマーサクセスや財務部門など、日常的にレポート作成業務を行っている担当者
仕事や業務でどう使えるのか
公式ブログの記載によれば、Tradeshiftの導入事例は以下のような業務改善につながったとされています。
- 社内の経理・サポートチームは、手作業のCSVレポート作成にかかっていた時間を週8.5時間削減
- 外部の利用企業(買い手)はユーザー1人あたり週6〜8時間の作業時間を削減
- Excelマクロやピボットテーブルなど手作業によるデータ加工が80%減少
- 業務上のボトルネックを特定するまでの時間が、従来の1〜2日から5秒未満に短縮
- 新規レポートの構築期間が4〜6週間から約1週間に短縮(75%改善)
自然言語での質問応答(チャットエージェント)により、SQLやデータ分析の専門知識がない担当者でも、必要な情報にその場でアクセスできるようになった点が業務効率化の中心となっています。
注意点
本記事はAWSと顧客企業(Tradeshift)による事例紹介(ゲスト投稿)であり、効果の数値はTradeshift社の環境・データ量・利用状況に基づくものです。他社が同様の効果を得られるかは、業務内容やデータ規模によって異なると考えられます。
また、公式情報上では、Amazon Quickの日本国内での提供状況や対象プラン、料金体系についての詳細は確認できませんでした。導入を検討する場合は、AWSの公式情報や担当窓口への確認が必要です。
公式情報
Evolving from legacy BI to agentic AI at Tradeshift with Amazon Quick(AWS Machine Learning Blog)
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